誕生日プレゼント選ぶの手伝ってくれって。
頼まれてたまの休日を三上先輩と一緒に外へ出た。



「笠井、これどうだ?」
「あー・・・俺は好き。・・・ですけど」
「そっか」

目に付いた所から片っ端。雑貨に洋服、本から何まで。中学生でも手が届く、リーズナブルを売りにしたテナントの多い駅前のデパートに一日中入り浸る。
誕生日プレゼントを買うならここが一番。
笠井も前に人参の抱き枕を誰かさんの為に買ったっけ。
泣きそうな親友の顔を思い出せば、込みあがるのはくすくすなんて、そんな笑い。

「何笑ってんだ?」
「・・・・・・・・・いや、別に。あーこの服、すげぇイケてなくないっスか?わー」
「うげ。マジだ」

目の前にあるのは大特価ワゴン、手に取ってたのはピンクのポロシャツ。しかも胸にアップリケ。サイズは。

「・・・あら。先輩ピッタリ」
「死ぬか」
「冗談です」

大ぶりの拳をわざと大袈裟に受けて。どちらともなく一階へと足を進める。
ウインドウショッピングは意外と体力使うから。
おごってやるよ、とその言葉にも素直にきゃあ。

「ダブルバーガーセットのLとハンバーガー単品で二つ、ナゲットとプリン。以上で」
「・・・・・・・・どこに入んの。お前。何時も思うけど」
「俺、席取ってきますから〜先輩も早くね〜」
「無視かい」

昨日までの大雨も何処へやら、今日は秋晴れ気持ちの良い穏やかな陽射し。
窓際を陣取ってぼんやりと笠井は三上が来るのを待つ。
買い物好きな親友の影響もあるけど、こんな風なのは楽しくて、好きだ。
だから三上が誘ってくれたのは嬉しかった。

その理由を後から聞いたとしても、それでも。

三上と一緒にいるのは嬉しい。
笠井は素直にそう思う。


・・・誕生日って。
あの面倒臭がりの彼がわざわざプレゼント、買うくらいのって。

誰だろう。


そんな疑問もまぁ、素直な所。



「・・・どうした?」
「あ―――・・・いや、別に。何でも。あれ?三上先輩、それ」

誤魔化しも含めて彼の手にあるプレートの上を示す。
そこにあるのは小さな笠井の好きな。

「プリン」
「・・・・・・甘いもの。嫌いなんじゃあ」
「たまには」

いいだろ別にとそっぽ向く。ず、と飲むのはブラックで。
彼のお株のニヤニヤを、口に浮かべて笠井も自分のオレンジを手に取った。
ビタミンCの心地良さ。

「・・・・・・へへへ」

何だよ、と彼は言わずに外をただ見ていてくれた。


ソレ、好きなんです。
そう言ったら帰って来るのは予想通りの。

「・・・知ってる」





「コレ買ってくるから。ちょい待ってろ」

銀のシンプルな十字架の黒のチョーカー。
立ち並ぶビルが茜色に染まっていく頃合、軽い足取りで込み合う店内に三上は消えていった。
夕暮れ時に擦れ違う人達の表情は明るく、優しい。
ぼんやりと柔らかい喧騒を耳に留めて笠井は一人、壁にもたれる。
胸に溢れるのはただ、嬉しさ。
もう少ししたら彼は迷う事無く自分の元だけに駆けてくる。

「・・・ごめんね」

顔も名前も知らない貴女。
今だけ勘違いさせて下さい。


お誕生日おめでとうって。

明日には言えるから。





「―――笠井」
「あ」
「悪いな、待たせちまって。行くか」
「はい」

零れ出る笑顔は本当のもの。
つられた三上もだから、多分。

夕日がちか、と小さく揺れて。包み込むのは気のせいですか。





「今日は―――・・・あー、ありがと、な」
「いえ、俺の方こそ全然役に立ってないのに奢ってもらっちゃって!凄い楽しかったです・・・って、俺が楽しんでどうすんだって」

あはは、と笑う笠井に三上はただ微かに笑みを浮かべるだけで。
階段の前でじゃぁ、ともう一度頭を下げて、笠井はくるり、と方向を変える。二階にある談話室、そこで皆でお土産を食べようと思った。
一段目に足を駆けたその時だ。

笠井、と呼ぶ声と何かが飛んでくるその音。
反射で受け止めればナイスキャッチと誉められる。
どこかで見た包装紙、小さな箱のようなそれ。

「やるよ」
「―――っえ・・・?」
「今日のお礼。また付き合ってな」

言うなり三上は踵を返して。
搾り出したお礼の言葉も、届いているのか判らなかった。


ちくしょう格好良いじゃねぇか。


胸に溢れる悪態は流石に口には出ないまま。
・・・部屋に帰ったら顔のあまりの赤さを理由に、藤代にベットへと押し込まれたりしたけれど。





「お帰り」
「おー」
「いいの買えたか?誕生日プレゼント」

上着をハンガーに掛けてた三上の手がぴたり、と止まる。

「何の話だ?」
「・・・誰かの誕生日なんだろ?藤代からそう聞いたけど。あの三上先輩が!って大騒ぎしてたぞ」
「あの野郎」

いつかシメる、と呟いてると、疑問視を軽い調子で渋沢が投げかけてきた。
別段、嘘を付く事に抵抗は無かったけれど、何となくだ。
クローゼットを片手で締めながら気負い無く答えた。


「・・・知らねぇ奴、の」


は?と余計に首を傾げる渋沢なんて気にも留めずに、財布に一枚だけ入っているレシートを、ゴミ箱に捨てる。
楽しい一日でした。
三上は手帳を開いて花マルをつけた。


そして思った。





・・・見た事無い誰かさん。

誕生日おめでとうございます、ダシにしてスイマセンでした。



まる。



@君におめでとうと、ありがとう。


三又某の誕生日に贈りつけてですよ。一日ずらして、な・・・!
久しぶりにこないだ見たらさん付けしてて気持ち悪かった。もう呼べない。


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