いつも仲良しっていいよねって言われた。でもどこかブルーになってた。
あれは恋だった。




「―――おぅ、早いな」
電子音が響いた時、有線はまた違う曲を流し始めた。
聞き慣れないのは少し昔の曲だからなのだろう。桜庭は耳を無理に傾けるのを止めにして、電話に意識を移した。目の前に座る友人には悪いな、と手を顔の前に立てて小さく会釈だ。学校帰りの寄り道、タイムアップはそろそろらしい。
「うん、俺いま友達と駅前に居るから。南口?・・・ん、じゃあ駅前のコンビニか本屋で待ってろよ。ちょっとしたら・・・うん、すぐ。ん、おう。んじゃまたな」
携帯の電源ボタンに指を伸ばせば、液晶がきらり、光った。通話時間は21秒。用件のみなのは、これからゆっくり過ごすから。なのだろう。
マックのコーラを飲み干した学友は、首を傾げて友達?と問いてくる。
「ん。サッカーの奴。待ち合わせてんだって言ったべ」
「あー、そういや明日試合だとか言ってたっけなー」
「おう。明日の買出しついでに、土曜で半ドンだから遊ぼうって話で。わりぃな、早めに着いたらしいから俺行くわ」
立ち上がると椅子がガタリと大袈裟に揺れた。
ごちそうさまのなれの果てのトレイを持って立ち上がると、にやにやした笑みが向けられた。嫌な感じだ。肩まで届き始めた髪をがしがしと掻き回して、何だよと桜庭は頬を膨らます。
「別にー?学校の繋がりもねぇのに、すげえなって思ってよ」
「・・・別に」
「おらっ、迎えにいくんだろ?仲良しさんによろしくなー」
ひらひら掌は無視する事に決める。
自動ドアが開けば途端に感じる、夏の暑さだ。むわっとする蒸し加減に、桜庭の脳までやられてしまう、そんな気がする。
何となく気分が下降するのは、夏の暑さだ。それ以外理由なんて無いから、きっとそうだ。
階段を昇って地下から地上に出る。日差しは相変わらずの猛暑のままで、眩しさに目を細めた。10分もかからずに、目的の場所目的の相手。辿り着く。


「おっす」


久しぶりだけど、何時も会ってる、そんな気がする。
そんな相手が、上原という名だ。




適当にだべりを繰り返してれば、気付けば時計の針は一回り。鬱屈した気持ちは本屋のクーラーで冷やされて、大分落ち着きを取り戻す。出たばかりの漫画を軽くレジまで二冊も持っていく、この隣の誰かも、一つの安定剤では、きっとあるけど。
仲良しでいいね。
何だかんだでつるむ様になって、それは良く掛けられる言葉。
聞き覚えのある、今日二度目のメロディーが店内に流れる。桜庭の耳に、小さく届く。
でも何処かブルーになってた。
それは歌の歌詞、だった。

「・・・さっきも、かかってた」

何時の間に会計を済ませたのか、聞き慣れた声は思ったよりすぐ側で聞こえた。
ぼそり呟いた上原の顔は、どこかで見た、そんな表情だ。
それはきっと、きっと。鏡の様な。そんなだ。

あれは恋だった。


曲はまだ、終わらずにいる。







@きみへのきもちはこいだった。


さくうえスピッツ。さゆたんへ。








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