初めて家に遊びにいったのは確か秋の始め。
コタツが嫌に早く出ていたのを良く覚えている、確か聞いたら「寒がりなんだ」なんて言って笑ってたっけ。



「てかさすがにまだ早ぇ―だろ。今日何月だか判ってる?」
「9月27日。凪紗雪免許獲得の日―。パフパフ―」
「・・・何だそれ」
「それかONELOVE関係者合宿IN青梅でもいいよ」
「てか何でそんな事知ってんのっ!!!」
にぃ、と笑って「秘密。」なんて言って部屋を出て行く上原。さっき飲み物どっちがいいかとか聞いてたから、きっとそれを取りにいったのだろう。コーヒーとコーラ、それとアクエリ。中学生に問う選択肢としては何だか最初のが随分浮いてる気が、うっすらとした。
こそこそ何となく背中を丸めて、桜庭はコタツに入る。
最初は散々馬鹿にしていたそれだけれど、意外と部屋の中は寒々しくて。足から伝う温もりが、思いのほか心地良かった。
出したばかりなのか、台の上は何も無い。とすん、と顎を乗せる。その内体勢がだるくなって横に向けた。ひんやりとした感触が、顔だけじゃなくて頭にも響いた。


コタツっていえば何だろう。


冬、自分だって愛用する。居間にある圧倒的な存在感、ついついふらふらと引き込まれて。寝転がってTVをつける。ジュースでも飲んで。そんでポテトでもつまんで。・・・普通はミカンとか言うのかな。それでもいいけど。それも、好きだけど。
犬は喜び庭駆け回り。猫はコタツで丸くなる。
軽く口ずさんで、桜庭は小さく笑う。貧困なイメージの偏り、コタツにミカン幸せそうに眠る猫。撫でてやりたい気分に駆られる。
他人の部屋というのに、結構緊張する実は小心者。
その割には段々うとうとしてみたり、不思議な気分を噛み締めつつ桜庭は目を瞑った。
いい気持ちだな、と素直に思う。
上原と一緒に何だか馬鹿をしてる、そんな時と同じ様な気分。
何となく落ち着く、理由も無く心地良い。そんなそんな。


何だか寝入ってしまうその瞬間、唐突に開いた。


「・・・・・・・・・何、寝てんの?」
ぼんやりとした目の中に飛び込んできたのは、お盆に載せたコーラ二つとそりゃあどうよ合わないでしょうよな籠入りミカン。それとそれと、足で行儀悪く扉を開けた。その。
「・・・・・・・・・・・あぁ猫」
「はぁ?」
「コタツにミカン。全部全部、勢揃い」
へにゃり、と体勢はそのままで。笑ってやれば上原が変な顔するのが判った。別に頓着もせず、喉擽ればゴロゴロとか言うかなとか馬鹿らしい事を寝ぼけた頭で考えた。

お前こそ猫みたいだっつの。
ぴん、と開いたおでこを指で弾かれて、桜庭はにゃ、なんて反射の声でついお返事を。
ミカンを片手に笑う見上げた上原の顔、それでもやっぱりお互い様だ。



背を丸くして、コタツに入る。
なるほど冬の前でもそれなりに良さそうだ。






@いいものは、いつだって。


こんな風な、誰かのためだけの話とかって超好きです。楽しいです。








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