本気で好きになったみたい。
 そう言えば君が困るのは判ってた。
 震えるんじゃなくて肩を竦めて、困るのが少し.。
 怖かった。





「…冗談」

 立ち上がって背を向けながら珈琲を入れる。銘柄は純粋インスタントの高級マキシム。自分のはブラックで、甘党の彼には砂糖二本にミルクを多め。入れ慣れた分量を迷いもせずに加えてやって、迷いもせずに呟いた。

「ちょっと騙されただろ。息飲んだの、聞こえた」

 ポットは部屋の付属。クーラーとか冷蔵庫とか使える電化製品なんて自分持込が原則なのに、中3男子の部屋に何処か浮いてるそれは卒業した先輩の置き土産だった。
 意外と便利だから。渡された時はポカリ1ケースの方がよっぽどなんて思ったりもしたけど、多分計算すれば自分達のエンゲル係数は低い方なんだろう。寮に設置されてる自動販売機の使用頻度はかなり少ない。
 こぽこぽとカップに直接注いでやれば、目尻にふわり、湯気が掠めた。


「怒るなって。物を投げない」

「…悪かったってば、ごめん。もうからかいません。ホント」

「―――ん。もうしない」


 もう言わない。
 湯気を手で払った勢いで、目元も軽く拭ってやった。目を瞑って数を数える。振り向けばもう何時もの顔。言い聞かせて、いち、にぃ、さん。


「…もう言わない」


 差し出されたマイルドなカップの中身を見て、君は少し笑ってた。
 その顔を見るのが好きだった。
 ほっとした表情のまま口をつけて、安堵するのが少し、辛かった。








@うそでもホントでも、胸が痛いんだ。



誰のつもりで書いたのかしらと、書いた本人が抜けぬけと訊ねれば即答で。「中根でしょ。」
…うん、あたしもそう思ってた。思ってたけど…よ!(逆切れ一歩手前)
元ネタ歌は槙原敬之Witch Hazelより。歌詞を見てるだけで切なくなる。
恋と呼ぶにはさよならを聞く事を最初から覚悟していた僕らだった。









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