なるみくん、おおきいからキラーイ。
だってこわいんだもん、あたしもっとちっちゃいひとがいい。



大好きなあの子にそんな事言われた時、子供ながらに本気で傷付いた。
同じクラスのチビが好きだって聞いたのは、それから少し後。ソイツがそれから単なるボールの取り合いレベルにしか過ぎない、サッカーを始めたのもそれから少し、少し後。
「このでっかい体でボールに向かったら、きっと怖がって誰もかかってこないんじゃん?」
「何だそれ」
「大きい体、カッコいいよ。なるみ、いいなぁ」
「・・・なんだソレ」
「サッカー、やろうぜ。たのしいよ」


大好きなあの子が見てるから、そんな理由で始めたのは本当。
大嫌いなチビをぶっ倒してやると思ってたのも、凄く本当。
そんでその内、大好きとか大嫌いとか、何もかも忘れてただボールを追いかけてたのもきっと。


「・・・忘れてんだろお前。きっと」
「んぁ?」
「そういう奴だって知ってんから、いっけど。別に」
「何の事だよ」
「別に」


あれから10年近く、随分な時間が経ったけれど、大好きなあの子を取られた悔しさも、チビが鬼門なのも相変わらずで。
それでもほんの少し、ほんの少し思う様になった。
あの時ボールを差し出した、相変わらずに小柄な体で自分の横をすり抜けていくこの相手。
こいつが居たからサッカーに、大好きなんて照れ臭い事言えるそれに出会えたという事。
ひょっとしたらと、思う様になった。



「でっかい体して、相変わらず訳わかんない事言うね」
「・・・お前は相変わらずちっけぇよ」
「それが売りでね」
「チビ」
「それがどうした」
「・・・小憎たらしい」



忘れてるだろうから、言わないけれど。
大好きなあの子より、大好きなサッカー。出会わせてくれたお前に、俺これでも感謝してるんだ。

いつか設楽がチビじゃなくなったら、いつか言ってやろうと思うんだ。
ありがとうなんて、柄じゃない言葉、これでも言う練習、こっそりこっそりしてるんだ。






@いつかでも。長い時間、必ずくる。いつか。


明星コンビ、こんな感じなら嬉しいなぁと思ってます。







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