花火がぱぁん、と上がる。


三上は宵の風に攫われた髪を軽く押さえ、音に釣られて上を向く。
遠い耳鳴りは未だ消えず。
目の前で口を開き笑う、笠井の声は聞き取れなかった。


花火はばぁん、ばぁんと続いて。

綺麗、なんて声が聞こえたのは結構経ってからの事だった。
街灯もロクに無い、線路沿いの小さな裏道。丁度木の間を縫ったその視界は尺玉ですらその輪郭を崩さない。
同じ様な花火見物に来た人々に混ぎれて、また笠井は小さく。
吐息を吐く様に。
灯りはロクに無い、敢えて言うなら空に咲くその華だけの。



綺麗だねぇ、と彼は笑った。
花火に照らされ映し出された横顔。

綺麗だなぁ、と僕も笑った。



花火はばぁん、と今度は大玉。

夏らしい、身体に付き纏う熱気は夜になってもまだ消えない。
生温い風に小さく舌を出していると、無粋な電車の汽笛が、嫌に大きく聞こえた。
風が髪を服を、勢い良く攫う。
明るさに目が眩んだ。
空に浮かんだ大玉の名残は、すぅ、と静かに闇へと吸い込まれていく。
眩しくて一度目を瞑った。


花火が―――夏が。好きなんですと。呟いた彼の表情。

見逃したから、大人しく空を見上げ続けた。
しゅるるるる、と微かな軌跡を残して、上昇していく最期のシメ。
微かに続く耳鳴りが気になり、手を添えて。



俺も好きだよと呟いた。

花火はばぁんと、大きく大きく。

君が好きだよと、呟いた。



大輪の華が空に咲く。

花火はばぁん、と空に夏を、告げている。





@みえてても、みえてなくても。


暑中見舞い企画、みかさへん2。
短く、テンポ良くが目標で、ちっともうまくいかないのもまぁいつものこと。








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