「下らない事言って良いですか?」



屋上の柵に身体全部を乗せて、こちらを見もせずに問い掛ける。
でもそんな様子をまるで何時もの事の様に、頓着もせずに三上はあぁ、と。言って文庫のページをまた、ぺらり。
詩集なんて柄じゃないので頑なにカバーで姿は隠すけど。
風が少し出てきた屋上。

「・・・今日雪が降るとか、朝TVで言ってて。その通りの真っ白なコレですけど」
「ん」
「良い天気ですよね」

瞬間、ぺらぺらぺら。
風に全てを任せて捲くれたページ。後書きなんか読んでも楽しくない、でもまるで目もくれなければ関係無い。
三上は少しだけ変な顔をする。

「・・・・・・頭平気か?」
「絶対言うと思った。驚いて空を見るとかして下さいよ」

ふ、と。
こいつ頭ん中読めるんじゃねぇだろうな、なんて思う。
今度は顔に出さずに、に、と笑って三上は文庫を閉じた。
そして冷たく硬いコンクリをぽんぽん、と。

「はい、此処」
「・・・・・・・・・・は?」
「説明。それと風除け。寒いから」
「カイロですか俺は・・・」

悪態吐きながら落ち着くそこは指定席。両足の間にちょこんと納まって、そのまま背もたれ代わりにしてやって。
ん、と身体を伸ばしてから笠井はまた空を見て。

「良い天気ですよ、やっぱり」
「・・・笠井」

三上の不思議そうな顔なんて、にっこり笑顔で封じてやれ。

「屋上、みたいな気持ち良い場所で。別に会話なんてしなくても、横に貴方が居てくれて。そうしてくれるなら、もう。何でも」

晴れたら眩しくて、雨になったら鬱陶しくて。そんな事も思う時もあるけど。
隣に居てくれる人の存在。
何でだろう、無駄に笑顔なんて浮かんでくる。

「・・・下らないけど。でも、俺。本当に」

そこまで言って黙らされた。
胸に回された腕に力が篭もる。伝わる熱は背中と顎に添えられた手と。
吐息が混ざる。

「・・・・・・・・そういうのは、さ」

下らないんじゃなくて。
離れた口から零れた白の吐息が、何だか薄く色付いた様な気がした。

勿論薔薇色なんて馬鹿な事言うつもりは流石に無いけど。





「あどけない話って、言うんだよ」





空は真白く、きっと夜には雪を舞わせる、そんな良い。
天気で。

風でカバーが外れたその詩集のタイトル。
それは確か。
たし、か。



@それは、それはとてもあどけなく


キリ番、馬鹿っぷる三笠。いつもと変わらない。(あいてー)
高村光太郎の知恵子抄、ゆうめいどころだから判ってもらえるといいなあです。


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