それを何と表現すればいいのか知らないけれど。



例えば冬の林。
色褪せた光が葉擦れ無い無音の幹達に優しく照り付け、橙色に染まっていく。
余分な物を全て削り落としたすらりとした樹木。
それは直視出来ない朝焼けと少し似ていると思う。別に眩しさだけが理由では無く。


細まる目。
酷く表情が柔らかくなるのを何時も感じる。
君に逢いたいって、そう思うんだ。





「・・・・・・いいですね」
白い息を弾ませて、君と二人。週末の相談をした時だった。
少し大き目の笠井のコート、襟からマフラーが揺れている。
「ちょっと遠いのが難点だけどな。坂多いし」
「頑張って自転車漕ぎましょう、ね?」
可愛らしく首を傾げる仕草に何だコイツと素直に思ったり。
抱きしめたい衝動なんて舌を出して無視してやって、酷く似合ってたそんな仕草を指先一つでぶち壊す。
「・・・お前がな」
日曜日、貸し出し可能な自転車はたったの二台。
折角の部活の休み、しかも年末前の忙しい時期だ。色々と入用の物の買出しに、その足は勿論誰が誰でも欲しがるもの。
ジャンケンによる争奪戦に、友人達への賄賂やら。優雅な白鳥がもがく水底を、笠井は知らない。
えー!と不満たらたらの頭の上にぽん、と手を置いて、ふんわりと笑えたその理由。多分、笠井も自分も。知らない。
「楽しみだな」
胸に浮かぶのは夕方、気紛れで変えた遠回りの帰り道。
夕闇に照らされて溢れた光。
その向こうには君の笑顔。
胸を込み上げる、その感情の名前は知らない。




好きだよ。
思いつきで適当にそんな事を言ってみたら、意味も無く思い切り殴られた。
笠井の耳は、あの日の夕焼けより色濃い、赤だった。






@きれいなもの、きみにみせたいもの。


眩しさに眼を細めて、むしょうに誰かに会いたくなる。
その衝動の名前を、まだ知らない。








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