暑い熱帯夜の過ごし方。
そんな攻略本が売っているなら、中学生の侘びしい財布を逆さまにしてでも買ってやるなんてやけっぱちに思う。
窓枠にへばり付きながら、生温い風をそれでも欲して。
肌を伝う汗を憎々しく思う。


三上亮は夏が苦手だ。




夏の最中の眠り方






「暑い」
「・・・・・・・・・・・・・・そうか」
「あついあついあついあついあーつーいー」
昼間は蝉が鬼の様に鳴いていて、陽射しは人を溶かそうとしているかのごとくで。日さえ落ちれば何とかなるかと思えば、あまり変わらない気温に虫の声。蝉もまだ鳴いている。
ぽい、と手元にあった雑誌を投げつけてみた。そんな事をしても涼しくなんてならない事は百も承知で、けれどやらなくて暑いままよりは百と一つくらいはマシだと思って。
夏らしい適度に腐った思考。
渋沢も慣れてきたのか、もうぶつけられた雑誌についてはもう何も言わない。
「ぐだぐだ言ってもしょうがないだろ。・・・何か飲んででもくれば」
「もう腹タプタプ」
「・・・・・・・・・・どっか涼しい部屋に移動」
「この冷房皆無の寮の中、どこにそんな処あんだ。言ってみる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃぁ」

絡みも最高潮に達する前に、渋沢が少し笑って口を開こうとする。
何故だか言おうとしている事は簡単に判った。
けれどそれは。それは。

「行かねぇっつの」
「・・・・・苛々をぶつけるのが嫌、なんだろ」
「そ。その辺良く判ってる、有難い同室者様がそれは付き合ってくれるからいーの」
何だかんだで「寝る。」なんて一言だけ言って渋沢の方を見向きもしないで、二段ベットの上に上がった。それでも背中越しに笑っている気配が判って。
黙って、気付かない振りをした。



目を瞑ればその分耳が敏感になる。
聞こえるのは昼と勘違いを続ける蝉と負けじと叫ぶ虫の声。遠くで犬も吠えている。あぁ救急車に反応してか。それとそれと。
「・・・・ガキ共がまーだ騒いでやがる」
「消灯も過ぎたのに元気だな。藤代なんてこんな暑さ、何のそのか」
「羨ましいね・・・」
風に乗って届く喧騒めいた。一つ下の、楽しげな声がダイレクトに真上から。
しまいにはドスドスなんて地団駄みないな音すらしてきて、天井が抜けないかと少し怖くなる。


とん。


その音は何処からやってきたのかは判らなかった。
ふと渋沢が換気の意味で扉を開いたそれだったのかもしれないし、二階に上がろうとしている寮母の姿を偶然捉えて、窓枠に駆け寄るその足音だったのかもしれない。
ただ自然と何となく。何となく。
身体がふぅっ、と動いた。

キャプテーン★なんて夜中に迷惑な大声とやめなよ、なんて彼の袖を引っ張る後輩二人。階越しの会話は首が痛いから、早々にやめてしまったけれど。


「センパイ」


驚いたその顔。
もしかしたら鏡だったのかもしれない、と思って、どうにかいつも通りの笑みを取り繕ってはみたけれど。
呼ばれたような気がしたなんて、そんな馬鹿な事流石に言えない。



「・・・寝るわ」
「おー」
タオルケットを引っ掴んで今度こそ横になる。静かになった頭の上、相変わらずの虫達の声も今度はいいBGMだ。
耳を澄まして眠りにつく。
この暑い熱帯夜、眠る時間が一番の苦痛とも言えたけれど、今日は何だか眠れそうだった。


君と同じ熱を共有してる事に気付いたら、眠れそうだった。





@こもりうた。


そのまま眼を覚ますな。(普通に、感想)
前のサイトのコメントで、書き方変わってないのかなとか書いてありましたが・・・どうだ・・・それ・・・。(眼を疑って)









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