「おっ邪魔―――っ!」
「やっほー」
何時ものノリと何時もの二人。パソコンのウインドゥを部屋に持ち込んだ勇者の部屋にゲーム機持参で乗り込めば、相変わらずの混雑具合にちょっと、引く。
それでも藤代がはいごめんよはいごめんよ、なんて言って無理矢理作ったスペースにちょこんと落ち着けば、後はどんちゃん騒ぎがまた始まって。


練習試合後の、次の日朝連無しの夜。
遊び盛りの14才達の敵といったらこの灼熱の熱帯夜、だけ。



熱い夜の過ごし方





「なぁ笠井」
ふと、藤代が振り向いた。
器用にコントローラーを持ったまま。丁度コンボが入り終わって、画面には「WIN!」なんて言葉。歓声。
小さくぱちぱちと拍手をしてやれば、何だか彼は嫌に照れて。
「・・・・・・・・・飽きなくね?」
漸く搾り出した様な声は、狭い部屋に寝転がってぼんやり画面を見ているだけの自分に対して。
抱き抱えているビーズクッションごと、ごろんと身じろぎながら。
「全然」
なんて笑えば。
「そっか」
と藤代はまた次の対戦者に向かってカモ―ンなんて挑発を始めた。
隣から「俺、お前等の会話全然判んねぇ」なんて呆れた様な友人の声。けれど段々と眠りの淵に落ち込んでいってる意識はそんなもの、相手になんかしなかった。


トン、トン、トン。
うつらうつらしながら、指は床を叩いていく。
「下に響くよ」なんて言われても、気にせず続ける。


夏のむわん、とした独特の熱気。窓から入り込む風も心地良さには程遠い。
開けっ放しの窓からは、耳を澄ませばぼそぼそとした声と気配。人が居る、その。
トントン、―――とん。
下に響けと思いながら。思いながら。


笠井がこの友人の部屋に時折ふらふらとやってくる理由を片隅に、思う。


「―――おーい」
「・・・やべっ、キャプテン!流石に騒ぎすぎたかなっ!」
慌てる彼等を尻目に藤代が窓から今にも飛び降りそうな勢いで覗き込む。真下の階。笠井も付き合いでひょこりと顔を出せば、親愛なるキャプテンと頼れる指令塔が、揃って窓辺で笑っていた。
「キャープーテ―ン★一緒に遊びませーんかー?」
ぶんぶん手を振りながら大声を出す藤代に向かって小さくしぃ。寮母さんがそっちに向かったぞ、なんて優しい笑顔で有難いご忠告をしてくれた。消灯後の部屋脱走は、バレると親呼び出しの刑だったりする。



蜘蛛の子を散らす、という事はきっとこういう事。



部屋の持ち主に「後オレやっとくから」なんて優しい言葉も頂いて、下の階の気の効く先輩方にお礼を階越しにいって、ばたばたと藤代と立ち去る。
廊下をそろそろ走ってる内に階段を登る寮母さん独特のテンポが聞こえたので、慌てて部屋に滑り込んだ。セーフ。
へたり込んで床に突っ伏せば、下の階の話し声がぼそぼそと聞こえた。
当たり前だけど、彼等じゃなかった。
ぼんやり思い出す、小憎たらしいあの顔。

けれど何時も見たいと思ってしまうあの顔。

「・・・・・・ゲーム中途半端になっちゃったね」
「そう!折角連勝記録伸ばしてたのに!笠井っ、明日も行こうぜ!な!」
振れば乗ってくる、この友人の性格はとても好きだ。
だから素直に。
「うん」
頷いて。それから。


床をトン、と指で弾いた。





@きみにあいたくなったら。


これは2年前、かな。(いや3年か・・・?)夏コミで配ったペーパー裏のおまけでしたよ。
三上と笠井のがあったので、「どっちがいいですか!?」と笑顔でプチアンケート。三上圧勝。(ぎりぎりぎり)







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