例えば梅雨の夕立。
ありそうで実際はない、言ってしまえば可笑しい言葉。



「つめてー」
「ベタな展開も程ほどにしろってんだ、っんとによぉ・・・」
部活帰り、蒸し蒸しする空気に幾ばかキレて、二人揃ってコンビニに足を運んだ。
寄り道は厳禁買い食いなんてもっての他だ。そんな監督の声は耳を塞いで、意気揚揚とアイスを選んで。店を出る前から袋を探ってわいのわいので。
そうやって自動ドアを二人で開くと、何だか知らないけど見覚えのない景色が目の前を広がっていた。
コンビニの中は意外と何だか防音なのだ。
アイスを咥えた二人の前には、視界を塞ぐどしゃぶりの雨と冷房めいた寒々しさ。
意味も無く二人、駆け出したのは、夕陽が見えなかったからだ。きっと。


「部室から傘持ってくりゃ良かったな・・・」
「そんな事言って傘、死んでも差さないくせに。曇ってただけだったのになぁ。さっきまで・・・」
「ホントになぁ。どうせお前が持つんだから、持ってこさせりゃ良かった。くそ」
「おいコラ。先輩」
シャッターが降り切った倉庫めいた場所、その軒下。反射つっこみをした処で気にするような人は誰も居ない。三上はまるで気にもせず鞄からタオルを取り出した。濡れた身体に自分で使おうと思って、その湿り気にすぐに嫌な顔をして。笠井に放り投げるそれはきっと優しさとか先輩からの配慮とかとは関係無い。笠井もすぐに投げ返す。ちょっとした、そんな口論も雨音に吸い込まれた。
先輩後輩、部活仲間にチームメイト。
そんな単語だけじゃない筈の、関係の二人だ。
不意に言葉が止み、雨音に心奪われて、二人過ごせる、それが嬉しい、そんなそんなだ。
「・・・超ペルー。俺」
「あぁ?」
聞き馴染みが微妙に無い言葉に三上は思わず沈黙を壊し、ツッコミ返し。
笠井は未だ雨を見て、昨日のラジオでやってたんですとぼそりと言った。
「ブルーに代わる言葉を考えようっていうテーマでね。青にも失礼じゃん。可哀相でしょ?だからペルーにマル決!」
「・・・はぁ」
「マリッジペルー。とか。三上先輩もやって下さいよー流行らせましょうよ!一緒に!」
「てかお前もうブルーじゃねぇだろ。テンション高ぇぞ。おい」
どうでもいい会話の繰り返しも天気も、似たようなものなのだろう。
アイスを食べて歯が冷えて、濡れた身体に震えて風邪気味、ペルーもブルーも大差無くて。
雨はまだ止まないけれど、三上も笠井も顔を見合わせた。
笑って雨の中、駆け出した。


「ちっくしょーっ、寮に着いたら止むんだよなっ!ベタだよな!」
「あっはは、夕立でしたねー!」
「梅雨なら梅雨らしく降りっぱなしで行けっつの!」
梅雨の夕立、濡れねずみ。笑えてしまえば、何でもいいんだ。きっときっと。
水溜りがきらりきらり、反射した。天気予報はそれでも明日も雨だった。





@おなじものをもとう。ぼくら。


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