はい、と差し出すのは何時もの赤い花束。
 ありがとう、と言って受け取れば、差し出した当の本人が嬉しそうな顔をする。
 天然なんだか隙が無いのか、相変わらず読み取れない男。掌の上で操り切れない微妙さにちょっとした好奇心も混ざって、確かその時、じゃぁお返しと、彼の愛用の煙草を差し出した。


「…参ったな」
 二人で会う時は決して煙草を吸わない、そんな拘りを持つ男はあからさまに驚きと困惑を顔に出す。
 その珍しい表情が気に入って、笑みを浮かべたまま彼の首に腕を回して。
 囁く様に、息を吹きかけた。
 何で判ったの。ジャンの声は、何故だか少し震えている。
「私は貴方の、なぁに?」
「……恋人」
「そう、良く出来ました。貴方にこうして抱きつける、恋人ね」
 厚い胸、鍛えられた二の腕、困ったままの顔。
 何処に触れても、最後に必ず鼻を掠める、それが彼の匂い。
「ヘビースモーカーの気持ちは判れないけれど…私は貴方の匂い。好きよ」
 安心して、と続ける前に、背に回された腕に力が込められた。目を閉じる。そうして包まれる、独特の煙草の煙のそれと、もう一つ。切り離れない硝煙の。







@ひとごろしのにおいが、すき。


コミックス10巻発売記念。
ハボックが全然主役じゃなくてたいそうびっくりした記憶があります。ごめん、アホで。








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