「嵐ですね」
 昨日の夜はまだ普通の雨だった。ラジオから零れ出る朝からの警報に眉を顰めてリザが呟けば、ああ、なんて気持ちの込められてない相槌が返ってきた。


 振り返れば彼は自分が入れた珈琲を口に運んでいて、そのまま頷いたものだから返事が曖昧になったのだろう。普段は要らないくらいに真直ぐに人を見てことばを、あたえる人なのに。寝起きというのも重なって、その珍しい空気に一人こっそりとリザは笑った。
「司令部まで行くだけでもうずぶ濡れだろうな、ここまで来ては」
「ええ・・・落ち着くのも昼過ぎという事ですし。いっそ夜勤の方が良かったくらい」
「そうしたら私が困るよ中尉。・・・といっても、この嵐の中君を送り出すなんてと、今だって正直酷く、困っている」
 雨の音と途切れ途切れのラジオの声。閑静な住宅街の中、今日はいつもより幾ばくか車の走る姿が多いと思う。嵐だろうと何だろうと仕事は仕事で、彼の次の言葉が容易に想像できたから、にっこりとリザは先に笑った。
「休みませんよ」
 そう言えば、彼も笑った。
「判ってる」
 会話を邪魔するように窓をひたすら叩くのは、さあ出かけよと急かしてばかりの嵐の風だ。






アニメ最終回ネタでかすり。
二人は同棲してるといい。普通に。




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