もらってもないのに返すのはどうかと思って横目で眺めたそんなもの。
ぼんやりと過ごした金曜日。
そわそわドキドキしていた友人達を尻目に、お邪魔しない程度にさっさと部室を抜け出し帰ってみた、そんな白い日。そんな自分だった。
「あ、近藤」
一日自分、ご苦労様と。栄養補給にコンビニへふらり、立ち寄ったのだって、ホント、単なる気紛れだった。
促してきた腹の虫と微かに見えた後姿、ただそれだけの背中押し。


「知ってる?ホワイトデー」
「・・・まぁそりゃな。なんだ、もてない奴への厭味か、お前」
「うん、まぁそうとも言う」
このやろ、と裏手でぺちりをする。きゃあなんて言う声は確かに女の子のものなのだけど、あまり意識をさせないこんな間柄が近藤もお気に入り。一歩進んでまた戻って、そんな毎日に文句は無かった。
合流したコンビ二から二人揃って、のんびりと並んで帰る。
町並みは夕暮れに染まり、夕食の匂いが鼻に届き始めた頃。
ほれ、と彼女はてのひらを差し出した。
「渡したいなら渡してもいいよ、ほれほれ。許可」
「・・・お前何様?」
「ホワイトデーに限らず、貢物は何時でも常時受付中」
その前に俺にくれてねぇじゃん。
もっともなツッコミをしつつ、近藤はポケットと鞄をこっそり探る。こんな笑顔の彼女は、目的を遂げるまでまず相手を離さない。
判ってる、長い付き合い。
判ってる、そんなの全部、・・・見てるから。
「・・・ほいよ」
「げ。しょぼいにも程があるよ何なのイチゴみるくって」
「いや、部活中にもらったから。偶然あった」
ぶつぶつ言いながら結局口に入れる、彼女は随分な甘党だ。そういえばくれた後輩、どうしたかな。今日。
「・・・てか、なに。・・・女の子?」
「ちげーよ笠井。知ってるっけ、うちのDF」
「あーうん。可愛いよね、あたしはちょっとタイプ違うけど。二人共人気あるけどあたしは三上くんの方がいいなぁー・・・うん。そう」
息を吐く、どこか張り詰めたものが霧散するその横顔が好きだ。
誤魔化しめいて饒舌になる癖も可愛いと思う。
見透かされて見透かされて、でも嘘なんかで被ってしまわない、しまわせない。怒り出すのも慣れたもの。その対応も、慣れたもの。
ほっとした?なんて言わないのも聞かないのも、それは無言の約束だ。
「―――っいたっ、鞄で殴るな!誕生日に何か買ってやるからそれで勘弁しろっつの!」
「きーっ、笑うのやめなさいってば!お返しってそういうんじゃないでしょ!大事なのは気持ちよ!中身よ!」
「どっちだよ!」
変な口論は延々続いて、結局もとのさやに収まった。
何度目かの「そのうち」の約束は、結局一度も果たされなかったりしている。気付いているけど、言った事無い。二人共。


良く言われる言葉、お前ら何時もそんなだね。
朱色に染まって笑いながら、高校でも仲良くね。言い出したのは、どっちだったかは覚えていない。今も。ずっと。







@こんなかんじで毎日を送ろう。ぼくら。


なんでもない毎日を、重ねていって、気づいたら収まっていてほしいのです。






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