妙に混雑している慣れた道。苛つく程でもないけど辟易はして、ハンドルに肘をついて溜息が零れ出た。
事前に電話で話していた約束の時間は5時。デジタルの文字は刻みを止めない。目的地はもう目の前といえども、時間前に姿を見せない自分に貴重な時間を割いている相手はもう苛立っているだろう。溜息をまた一つ重ねて、西園寺は前を見た。交差点の信号は、車を三台程行かせただけでもう赤へと変わってしまっている。



渋滞の人間がやる事といったら、音楽を聴くか周りの風景を眺めて気を紛らわすかそのどちらか程度だ。此処までくるまでに既にラジオに飽きた西園寺は後者を選ぶしか無く、地元とそう変わらない景色へと目をやった。
駅前にも近い交差点、電車から降り立った者や近くの学校の制服が行き交ったりたむろしたり。
何でもない風景にそれでも何故か笑みを浮かべて、角にある反対側の小さな商店が何故か、目に付いた。
「…あら」
学校の購買をそのまま少し、大きくしたような店だった。
立地条件からしても店に並んだ品揃えからしても、学生の溜まり場になるのは最初から判っていた、そんな。
現に今も白と黒のジャージの軍団が、車に乗る自分にも聞こえるくらいの馬鹿騒ぎで、あっけらかんと笑っている。
それは見慣れた顔も混ざった、何処かで必ず見た事のある顔ぶれ達。
「…スナック菓子とか、コーラとか。あら、カップラーメンも。武蔵森では禁止されてないのかしら、ねぇ…」
言いながら、大仰に作った溜息を吐きながら。それでも見守るばかりで、車を止めて注意しようなんて気持ちは更々起きない。中には選抜に選ばれている、自分の管轄内の子供が居るとしても、それでも決して注意なんか、しない。

何の因果か11人、揃って笑ってる、そんな練習後の作戦会議。共有の空気。その大事さを知っているから、自分はしない。

「それにしても、仲良しですこと」
信号は漸く変わって車が動き始める。アクセルを踏みながらの西園寺の言葉は当然彼らに届く訳も無く、だからきっと、捨て台詞なんかじゃない。信号に捕まるのもいい加減に飽きたから、急いでハンドルを切って、左へと曲がった。ウインカーは後からだった。
武蔵森に着いたら、中てられた仕返しはしてやろうと、ふと思った。
最後に聞こえた大合唱の様な、桐原死ね!なんて言葉はあっさり聞こえない振りを、決め込んで。






@よりみち、たいせつ。


拍手のお礼SS用として、最初考えていたネタ。やんなくてよかった。(うん、きっと正解)
一軍メンツ全員揃って寄り道ってかわいくないですか。仲良しで。

スランプ前→スランプ全盛期→スランプ解消?の時間軸で書いていたので、何か色々むちゃくちゃです。落ち着いたら書き直そう。








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