ハンカチなんか今時常備している人も珍しい。
酷く、確か暑い日で、ハンドタオルが出かけに見つからなくて。目に付いた母親のそれを、掴んで鞄に詰め込んだんだと、後になって思い出した。



根岸靖人落としゲーム:その1〜出会い〜



「落としたよ」

不意に肩を捕まれて、喉元まで出かけたきゃあは何とか何とか、飲み込めた。
夏の暑さにすっかりやられてぼんやりしていたのだろう、振り返って差し出されたそれを見てもすぐには反応出来なかった。
見覚えのないハンカチ。
赤がキツくて、ただ眺めてるだけで暑さが増しそうだなんて思う。
「・・・さっき携帯、出す時に引っ掛けたのか、一緒に出てきて。落としてたんだけど。・・・判んない?」
多分、この時暑さでかなり頭が参ってた。
素直に受け取ればそれで終わりだったのに、重力に従い、首は縦にかくん、と落ちて。頷いて。
困らせるだろうなぁとは、頭の隅で思いはする。ごめんなさい今日射病で倒れる一歩手前なんですと心の中で謝って、(声に出す気力はとうに使い果たしてる)気だるげに顔を上げた。そう言えば拾ってくれた人の顔もまだ見てもいなかった。声で男の子とは判ったけれど。きっと困った顔をしてるだろうなぁ、と思って、目を開ける。
太陽を背に、向日葵めいた。
予想外の笑顔は、眩しかった。


「そっか、じゃあ。出会えた記念に」


手首を取られると、自然と掌が開けた。そこに落とされたやっぱり覚えのないハンカチと、見たことも無いにんまりとした男の子。
目が覚めた。
「プレゼント。そんじゃ、俺、練習あるから」
「―――…って、あのっ!」
「武蔵森サッカー部三年根岸靖人備考彼女無しでーす。ごめんね時間無いから聞かれる前に答えちゃった」
ファンレターは部室ロッカーまでね!
聞いてねぇよと突っ込む前に、彼はたたたと駆けて行く。大きなドラムバックは成る程確かにサッカー部らしくて、その軽快な足取りもさすがで後姿はもう遠い。
暑い日差しは最高潮で、立ち尽くすだけで身体がよろけた。
湯だりながらも渡されたハンカチは離さない。電柱にしがみ付きながら、前を見据えて、思わずぽつり。零れるのもしょうがない。


「・・・彼女、無し。か」


動悸息切れ、救心買って帰ろうか。
胸を押さえてハンカチ握りしめて、ずるりと身体を引き摺って。治まらなかったら、責任取ってもらおうと。
意識を失うその瞬間に、決意をちょっとしてみたりだ。



A:ランニング中の近ちゃんに行き倒れを助けてもらって、二度目の運命の出会い

B:救心片手に彷徨うものの武蔵森の場所が判らずコンビニでサボる三上に道を聞く




ファイナルアンサー?(聞かれても)







なつきのに捧げた、メッセ中の駄目ばなし。
こんなんで喜んでくれるあの人は本当に根岸が好きなんだなあと思いました。









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