取引なのよ、と女は言った。

「貴方の邪魔はしないわ。焔の大佐」

 だから貴方も、と女は笑った。

「ただそれだけ。それだけで、今の貴方をあっさりと救ってあげる。腹の穴もそのもう動かない右手も傷一つ無く綺麗にしてあげる。何なら頬の傷も一緒に・・・それと勿論。貴方の大事な部下で、私の大事な恋人も、よ?」

 再生が終わり、向かい合った当初から何一つ変わっていない漆黒の髪と白い肌。整った女の顔は、綺麗だと思った。

「さぁ、どうする?」

 問いかける女の手は目の前にすっと降りてきて。ぼんやりとそれを眺めながら、ただその時頭にあったのは。雨降りの日の。


「私の、意志だ」
 それはいっそ宣誓の様な、横に居る彼女に伝える為じゃなく、自分に言い聞かせる様に運んだ言葉。
「取引など最初から成り立たん。私は、私の意志で此処に居る。他者が介入する余地など、最初から何処にも無い」
 弾いた女の白い掌。踏みにじってやりたいと思って、目も逸らさずに見つめていた。

「・・・ヒューズの仇だ」

 それは、床に転がりながらずっと仕込んでいた、割れ落ちたガラスで掌に直接刻んだ練成陣。流れ続ける赤い血は、それでも自分が流させた分には程遠い。せめてこの爆発でかの片腕の君が駆けつけて、育てばきっと優秀な、先有る部下を助ければいい。残った感情の欠片が思う事は、それだけだ。

「地獄の業火のその前に、私が燃やすと決めている!」

 叫んだのは何処までも背中押し。
 決意表明とは成る程良く言った。歪んだ女の表情を見遣って少し、満足した自分を、声は何処までも強く、前へと押した。







強大佐、ヒューロイ編。
台詞は少し気に入ってます。後、血の錬成陣ネタだけは本編と被ったですかなー。












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